〜私が薦めるこの一冊〜



平成28年度に書かれた推薦文

アバドのたのしい音楽会 『とんでもない』
 鈴木のりたけ/作  アリス館


  表紙に描かれた、迫力のある、でも、あまりに人間くさいライオンの表情に目をうばわれてしまいます。ページをめくっていくと、愛らしい動物たちが、次から次へと登場してきます。彼らは、他の動物から、色々とうらやましがられています。でも、彼らは得意満面にはなりません。それどころか、彼らの表情は、どこか切なげです。それは、彼らには、他の動物には分からない苦労があるからです。

 子どもでも大人でも、他の人をうらやましく思った経験はあるはず。でも、あなたがうらやむその人は、見えないところや知らないところで、人知れず苦労をしているのかもしれません。他の人に思いを寄せることの難しさに気づかされます。
 「私のどんなところを他の人はうらやましいと思っているのだろう?」。そんなことを考えてみると、心が軽くなって、ありのままの自分をそのまま受け入れることができるようになります。
 子どもも大人も、「素敵な本に出会えた。」と思える一冊です。

推薦者(所属) 福士 徹也 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

まあちゃんのながいかみ 『ともだちや』
 作:内田 麟太郎 絵:降矢 なな   偕成社


 この本は「おれたち ともだち」シリーズの1つめの作品です。

  キツネは ともだちやさんを はじめることをおもいつきました。
   いちじかん ひゃくえんで ともだちに なって あげるのです。
   ちょうちん もって、 のぼりを たてて
   「えー、 ともだちやです」
   でも ともだちって うれるのかな? かえるのかな?(本文から)

 子どもたちは、新しい出会いがあると、友達になりたいと願い、関わろうと試みます。でも上手に仲良くなれないときもあるかもしれません。
 子どもたちは、キツネを含めた登場人物が、自分なりの方法で友達をつくろうとする姿に、自分を重ねながら、読み進めることでしょう。 
 読み聞かせにもおすすめの一冊です。

推薦者(所属) 杉田 大樹 氏 (神奈川県教育委員会教育局湘南三浦教育事務所)

ふたりはともだち 『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』
 著:佐藤美由紀   双葉社ジュニア文庫


  「貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人のことです。」と話したのは、ホセ・ムヒカさんです。彼は、2015年の3月まで、ウルグアイの大統領を務めていた人物です。この言葉は、ある記者に「いつも、貧乏な大統領と報道されて嫌になりませんか。」という質問の後に述べた言葉です。
 私たちは、自分のほしいものが手に入ると幸せな気持ちになれる気がします。でも、それが手に入ると、もっと欲が出て新しいものが欲しくなってしまう。これこそが「貧乏な人」とムヒカさんは言います。
 ムヒカさんは質素な生活をしている人たちが多数派と考え、大統領の時に限らず、政治を行っているときはいつもその多数派のことを考えながら行動しています。また、自らも質素な生活を送り、国民からも大きな支持を得ていました。
 彼の人生も平坦なものではなく、家庭での苦労や国との戦いにも関わり、自分の信念と国のために尽力してきた人物であると強く感じました。
 ムヒカさんが考えている平和な社会とは何なのか、この本を読むと共感する部分も多くあると思います。ぜひ読んでみて下さい。また、絵本も出版されているので、たくさんの人に読んでほしいと思います。

推薦者(所属) 佐伯 利彦 氏 (神奈川県教育委員会教育局中教育事務所)

にじいろのさかな 『注文の多い料理店』
 宮沢 賢治/著   新潮文庫刊


  『わたくしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風を
 たべ、桃いろの美しい朝の日光をのむことができます。
   またわたくしたちは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばん    
 すばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび
 見ました。
   わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。    
  〜 中略 〜   
   けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、
 あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかり
 ません。』
                         ―童話集「注文の多い料理店」の序より―

 宮沢賢治の作品はとてもきれいで、ロマンチックであり、奥が深いと思いませんか。皆さんも宮沢賢治の作品に触れ、「すきとおったほんとうのたべもの」を探して見ませんか?

推薦者(所属) 星野 倫克 氏 (神奈川県教育委員会教育局県西教育事務所)

平成27年度に書かれた推薦文

アバドのたのしい音楽会 『アバドのたのしい音楽会』
 クラウディア・アバド 文
 パオロ・カルドニ   絵
 石井 勇・末松多壽子 訳  評論社


  今でもはっきり覚えていることがある。ある日、魔法のような音にひかれて、居間にそっと近づいてみると、 ・・・なにか、ぼくにはわからない言葉でバイオリンに話をさせているパパが見えた。それは、とても美しい言葉だった。 (本文から)

  著者は、イタリア生まれの現代における最高の指揮者の一人であるクラウディオ・アバドです。
  この本は、アバドの音楽との出会いからはじまり、自分の成長と音楽との関わり、 オーケストラを中心とした西洋音楽やその楽器の紹介と、アバドの音楽の世界へ どんどん引き込んでくれます。最後には、自分の指揮者としての心構え、自分の 人生にとって音楽とは何か、そして、人は音楽とどう向き合っていくのか、アバドがやさしく語りかけます。
 アバドを音楽の世界へと誘った曲は、何だったのか、その答えは本の中にあります。
 音楽を志す子供たち、音楽に興味のある子供たちは、もちろんのこと、そうでない子供たちも きっと新たな関心をもってくれるであろうと思います。これから、子供たちを音楽会に連れてい きたいと思っているお父さん、お母さんにも、是非、お読みいただきたい一冊。

推薦者(所属) 堀端 保聖 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

まあちゃんのながいかみ 『まあちゃんのながいかみ』
 たかどのほうこ 作   福音館書店


 まあちゃんの髪は短いおかっぱです。長い髪が自慢のお友達に対抗して、 まあちゃんは、「髪をもっとずーっと伸ばすよ」と言いました。 「へえ、どれくらい?」と聞かれて、まあちゃんの想像の世界がどんどん広がっていきます。
  長い、長―いおさげに餌をつけて橋の上からお魚を釣ったり、長い、長―い髪を海苔巻きみたいに ぐるんぐるんに巻いてくるまって、ふかふか布団のかわりにして木の上で寝てみたり・・・。 長い、長―い左右のおさげをぴーんと張って木に結べば、洗濯物だって干せちゃいます。
  この絵本を読むと、忘れかけていた子どもの頃の夢見る心を思い出します。 また、カラフルな表紙は、長―い髪をうずまき状にして寝転んでいるまあちゃんの絵で、 うずまきの中には、お花が咲いていたり、たくさんの動物や虫がいたりと、表紙を見ただけで楽しい気持ちになれます。
  皆さんも、どんどん膨らむまあちゃんの素敵な空想の世界を味わってみませんか。 また、親子で一緒に、まあちゃんの空想を広げていきながら読んでみるのもおすすめです。

推薦者(所属) 與那嶺 栞奈 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

ふたりはともだち 『ふたりはともだち』
 アーノルドローベル 作  三木 卓 訳   文化出版局


 『ふたりはともだち』には、5つの物語が入っています。そのうちの1つ『おてがみ』を紹介します。
  今まで一度も手紙をもらったことがない「がまくん」。 「がまくん」の友だちの「かえるくん」はそのことを知り、「がまくん」に手紙を書くことを思いつき、 大急ぎで家に帰って手紙を書きます。その手紙を途中で出会った「かたつむりくん」にあずけます。 「がまくん」が初めて手紙をもらう姿を想像しながら、「かえるくん」はまた「がまくん」の家に戻ります。
  『おてがみ』には、「かえるくん」の優しさ、「がまくん」の素直さ、「かたつむりくん」の頑張りがあり、 読んでいてとても幸せな気持ちになります。挿絵に注目して読むと、1つ大きな発見がありました。 『おてがみ』の中で「かえるくん」が着ている上着は、5つの物語の1つ『なくしたボタン』の中で 「がまくん」が「かえるくん」にあげた上着だったのです。『おてがみ』がさらに好きになりました。
  「がまくんかえるくん」シリーズは全部で4冊出ています。2人の心温まる物語をたくさん読んでみてください。

推薦者(所属) 永野 文 氏 (神奈川県教育委員会教育局中教育事務所)

にじいろのさかな 『にじいろのさかな』
 マーカス・フィスター 作  谷川 俊太郎 訳   講談社


 私が、息子や娘にキラキラしたにじいろの魚の絵を見せながら、読み聞かせをした思い出の一冊です。
 キラキラとしたうろこが印象的な本の表紙。もしかしたら、本屋さんや図書館、学校などで見かけたことが ある人も多いのではないでしょうか。
 主人公は、にじのように、様々な色合いの、青と緑と紫のうろこをもつ魚です。 そのうろこの中には、きらきら輝く銀のうろこもあります。海の中を探しても、こんなきれいな魚はいません。 他の魚たちは、彼を「にじうお」と呼びます。
 誰もがうらやむ「にじうお」ですが、海の中で1番さみしい魚になってしまいます。 困った「にじうお」は、かしこい「たこ」に相談します。すると、「きらきらしたうろこを1枚ずつ他の魚にあげるといい」と言われます。 悩みながらも大切なうろこを1枚ずつ渡していくと・・・。  「しあわせ」について考えさせられる一冊です。

推薦者(所属) 高橋 壮芳 氏 (神奈川県教育委員会教育局県西教育事務所)

平成26年度に書かれた推薦文

宇宙からの帰還 『いつでも会える』
 菊田 まりこ 著   学研教育出版


大好きなみきちゃんが急にいなくなった。
会いたい、会いたい。そして頭をなでて。
悲しみにくれるシロ。
でも・・・、目をつむると、考えると、いつでも会えるんだ。
あの時のまま。大好きなみきちゃんと。

 大切な人を失ったときの悲しみや絶望、でも想い出はいつまでも心に残ることを、愛くるしい絵と言葉で表現した絵本です。
 この絵本に「死」という言葉は出てきませんが、十字架の絵が、少女が亡くなったことを暗示させています。
 この本がベストセラーになって、十数年経ちますが、思い出したように読み返すと、その時の自分のシチュエーションによって、受け止め方も異なります。

 シロは今、どう思っているのでしょうか。みきちゃんはどんな気持ちなのでしょうか。ぜひ、お子さんと一緒に読んでいただいて、感想を親子で話しあっていただきたい、短編絵本です。

推薦者(所属) 花田 忠雄 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

赤ヘル1975 『赤ヘル1975』
 重松 清 著   講談社


 「赤ヘル」とは、赤いヘルメットを1975年より着用し、「赤ヘル旋風」、「赤ヘル軍団」など、その年のプロ野球・広島東洋カープの選手達の躍進を象徴するフレーズである。また、1975年は、広島に原爆が投下されてから30年。原爆や戦争によって深い傷を負った広島の人々が、1950年の球団創設以来、夢や希望を託し続けてきた、広島東洋カープ悲願の初優勝に大きく沸き立った年。
 そんな広島に、この年の5月、東京から転校してきた主人公のマナブは、転校当初は「よそモン」と呼ばれ、厳しい洗礼を浴びることになる。しかし、広島の大人たちの温かさにふれるにつれ、30年経ってもなお傷ついたままの広島の人々の内面に気づき、自分に何ができるかを、悩みながらも真剣に考え行動することで、友達や周りの人々との絆を強めていく―。そんなマナブの成長していく様子に、この年、悲願に向かって大きく躍進していく実在の「赤ヘル戦士」たちの活躍を織り交ぜ、展開していく物語。
 野球好きの人もそうでない人も、楽しみながら読め、一方で、平和についても深く考えるきっかけになるおススメの一冊です。

推薦者(所属) 藤沖 亮 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

トム・ソーヤーの冒険 『トム・ソーヤーの冒険』(The Adventures of Tom Sawyer)
 マーク・トウェイン 著
 大久保 康雄 訳   新潮文庫


 『トム・ソーヤーの冒険』(The Adventures of Tom Sawyer)は、1876年に発表されたアメリカの少年少女向けの冒険小説です。ミシシッピ川のほとりの小さな町に住む、少年トム・ソーヤーは勉強嫌いで、家の手伝いをさぼってばかりいます。腕白ですが、正義感の強いトムは、親友のハックルベリー・フィンをはじめとする仲間たちとともに、さまざまな冒険を繰り広げます。
 この本をはじめて読んだのは子どもの頃のことで、あまりのおもしろさに一気に読みきってしまったことを覚えています。
 この本の著者マーク・トウェインは、1835年にミズーリ州のフロリダで生まれたアメリカを代表する国民的作家です。この時代のアメリカは、まさに超大国となる土台を築いた時代でもありました。マーク・トウェインは、アメリカ西部の雄大な自然とともに、当時のアメリカ社会を、時に皮肉なメッセージを込めて描いています。トムたちが繰り広げる冒険の数々は、マーク・トウェインが少年時代に、自分自身あるいは友人の身に実際に起きた出来事であると言われています。マーク・トウェインは、いたずら好きで冒険好きですが、弱いものの味方で正義感の強いトムをいきいきと描いています。『トム・ソーヤーの冒険』は、単に冒険小説としてだけでなく、自由と夢が詰まった、いかにもこの時代のアメリカを象徴する文学作品なのです。日本の少年少女たちにはもちろんのこと、かつて少年少女だった大人たちにも読んでほしい作品です。

推薦者(所属) 河野 光志 氏 (神奈川県教育委員会教育局湘南三浦教育事務所)

舟を編む 『舟を編む』
 三浦 しをん 著   光文社


 「言葉ってすごいな」そう思わせる1冊です。
 辞書を作る編集部の話なんて退屈そうだなと思って読み始めたのですが、魅力的な登場人物と多くの視点で紡がれる物語は、胸躍る素晴らしいエンターテイメント作品でした。小説家が「言葉」や「本」という題材に正面から挑んで、こんなに素晴らしい作品を作ってしまうなんて、著者の勇気と力に感服してしまいます。
 素晴らしい作品なので映画化もされていますが、「言葉のすごさ」を十分に味わえるのは小説版です。物語には「本作りにおける紙の大切さ」も描かれているので、ぜひハードカバーで読むことをおすすめします。ページをめくる作業自体がとても楽しいです。
 普段出会わない言葉も出てくるので、辞書を引きながら読むとさらに楽しいです。「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」そうです。さあ、辞書と小説を抱きしめて、言葉の海に漕ぎ出しましょう。

推薦者(所属) 太田 公仁 氏 (神奈川県教育委員会教育局県央教育事務所)

ぎふちょう 『ぎふちょう』
 舘野 鴻 著・絵   偕成社


 ギフチョウを見たことはありますか。ギフチョウは、早春に舞い飛ぶ美しい昆虫で、まるで春の小さな妖精のような姿を見せてくれます。その寿命は約1年で、そのうちの10か月は蛹として眠っています。
 春にギフチョウに出会えること、それはひとつの奇跡かもしれません。林で産みつけられたたまごが、すべて順調に大きくなるわけではなく、まわりのたくさんの生きものが交錯する中、育っていくのです。
 その様子を細密に、そしてさまざまな環境の中で、たくましく成長するギフチョウを温かく見守っているような感覚をもつことができる、そんな素敵な絵本を描いたのが舘野鴻(たてのひろし)さんです。
 舘野さんは、1996年から神奈川県内に在住し、生物調査の傍ら本格的に生物画にかかわる仕事を始め、図鑑や児童書の生物画、解剖図プレートなどを手がけています。
 絵本『ぎふちょう』の世界に入り込んで、ぜひ生きものたちのさまざまな営みを味わってください。

推薦者(所属) 露木 光人 氏 (神奈川県教育委員会教育局県西教育事務所)

平成25年度に書かれた推薦文

宇宙からの帰還 『宇宙からの帰還』
 立花 隆 著   中公文庫


 宇宙の研究、宇宙開発など、宇宙に関する本は数多く出版されていますが、この本は異色です。宇宙飛行士が、その宇宙体験によって何を感じ、精神的にどう変わったのかを、宇宙飛行士本人へのインタビューを通じて明らかにしていくものです。
 宇宙への飛行は時代の最高のテクノロジーなくしては成し得ないものであり、そのことに注目が集まることは当然ですが、考えてみれば、人類が宇宙に進出したことは、海に誕生した生物が陸に上がったこと以来の大事件です。
ましてや、人類という知性を備えた生命体がこの事件の主人公であり、そういう意味では地球始まって以来、初めての大事件です。そうであればこそ、その人間の心・精神の変化に光を当てたレポートが無かったことが不思議なくらいです。
 興味深いのは、多くの宇宙飛行士が宇宙で神の存在を感じたという事実です。理系人間の最たる宇宙飛行士が、最先端の科学技術に支えられた状況に身を置きながら、宇宙空間の限りなく深い暗さや、青く輝く地球を見て、感じることによって、科学技術とは縁遠いと思われる心の内面に大きな変化をきたすことは、とても不思議なことです。宇宙の本というより、神とは、宗教とは、人の心とは、そして人間とは何かを考えさせられる、深い内容を含んだ本です。

推薦者(所属) 巴 靖章 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

いいじゃない いいんだよ 『いいじゃない いいんだよ 大人になりたくない君へ』
 水谷修・岩室紳也・小国綾子 著   講談社


 生・性…… どちらも大切なものということを本当の意味で実感できるようになったのは、最近のことかもしれません。
  身近な人の死を体験することで、本当の生き方を考えるようになりました。今の子どもたちはバーチャルな死だけを体験し、生きることの意味を考える機会がないのかもしれません。
  性については、あまりにも子どもたちの性に対する意識の低さに、大人が教えるべきことを伝えていないと反省させられます。
   この本は、水谷氏と岩室氏と小国氏の3人が若い時に体験してきたことがストレートに書かれています。興味はあるけど、聞きづらい話題も満載です。 この本をとおして、生きるとはどういうことなのか、本当の性とは何かを感じてもらいたい一冊です。

推薦者(所属) 寉田 晃子 氏 (神奈川県教育委員会教育局県央教育事務所)

きみの友だち 『きみの友だち』
 重松 清 著   新潮文庫


 あなたの「友だち」はだれですか。そんなありふれた質問を投げかけられたとき、まっ先に思い浮かぶのは、だれの顔ですか。いろいろな顔が思い浮かんだあなたにも、特別な一人を選んだあなたにも、苦い思い出とともに「友だち」という言葉をうまく受けとめられないあなたにも、「友だち」の存在を改めて考えさせてくれる本です。
 「友だち」を失った女の子を軸に、どこにでもありそうな短い物語が、時間を行きつ戻りつしながら、見事につむがれていきます。ミステリー小説のようなあざやかな結末はなくとも、短編連作小説のおもしろさが極まっています。
 年を重ねたあなたは、きっと昔の、ちょっと思い出したくない自分に出会えるでしょう。思春期まっさかりのあなたは登場人物に自分を重ねて、少し苦々しい気もちになるかもしれません。それでも「友だち」とつながることの大切さを教えてくれる一冊です。

推薦者(所属) 島田 健一郎 氏 ( 神奈川県教育委員会教育局足柄上教育事務所)

にんげんだもの 『にんげんだもの』
 相田 みつを 著   文化出版局


 この本は、主に筆で書かれた詩の短編集である。
  正直言って、あまり本を読まない私でも、この本に惹かれてしまった。その魅力はどこにあるのだろうか。
  一番の魅力は、単純明瞭な文章である。日常にあることを題材に、素直な気持ちで、つぶやくように語りかけているので、とても分かりやすい。思わず、「確かにそうだ。」と頷いてしまうことも度々。また、「あのときの気持ちだ。」「こうありたいなあ。」などと考えたり、「自分は、このようにできていただろうか。」と問いただしたりすることもある。
  別の魅力としては、個性的な字である。通常、本になるくらいなので、きれいな字で書かれたり、パソコンで入力されたりした字を想像しがちだが、そうではない。逆に、そうでないことにより、自分にとって身近な存在と感じ、本好きでなくても、あらゆる人が壁をもたずに、条件なく読めるのである。
  最後に、この本を読み返すたびに、謙虚さ、素直な心、相手を思う気持ちが大切なんだと感じる。それが多くの人に読まれる理由ではないだろうか。

推薦者(所属) 藪 譲二 氏 (神奈川県教育委員会教育局足柄下教育事務所)

平成24年度に書かれた推薦文

ファウスト 『ファウスト(文庫版)』
 手塚 治虫 著   朝日新聞出版


 本書はマンガである。しかし、マンガだからといって、あなどらない方がいいと思う。本書に収録される「ファウスト」と「百物語」は、いずれもゲーテの『ファウスト』を下敷きにしているが、別の作品として読むことができる。一読すれば、あなたはたちまち魅惑的な手塚ワールドのとりこになってしまうだろう。
 ここでは、和風テイストに仕上がった「百物語」について紹介したい。役人の主人公は無実の罪をきせされ、切腹を言いわたされた。しかし、女の悪魔(悪魔が女であるところが、原作と大きく異なるところ)と契約を結び、一命を取り留める。契約とは、悪魔が主人公の三つの願いをかなえる代わりに、主人公はタマシイを売るというもの。風采の上がらない主人公はイケメンに変身し、新たな人生を謳歌する。
 「百物語」のテーマを一言で表すのは難しい。人間は何のために生きるのか、幸福とは何か、本当の自分とは何かなど、問いかけは幅広い。その中で、何を感じ取るかはあなたしだいである。テーマは、一度読んだ後に、読者がみずから設定すればいい。そのテーマに沿って、あらためて読み直してみる。このような読書のしかたがあることも一つの発見であり、おもしろいところ。

推薦者(所属) 松尾 聖司 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

チップス先生さようなら 『チップス先生さようなら』
 ジェームズ・ヒルトン 著
 菊池重三郎 訳   新潮文庫


 この本は、おおよそ100年前のイギリスの「チップス先生」の日々の生活が描かれている物語です。 さて、この「チップス先生」は、最後に「さようなら」します。
 私はこの本を読み進めていく途中で、どのような「さようなら」をするのか気になり、がまんできずに最後(結末)を先に読みました。最後の方を読んで、ああ、こういう「さようなら」なのかと、ほっとして元のページまで戻り、順を追って読み進めました。すると、私の読んだ「さようなら」とは違う「さようなら」が待っていました。私は先に最後の方を読んだとは言っても、最後の段落までは読んでいなかったのです。読んだつもりでいた結末と実際の結末のギャップ(大きな違い)に思わず泣いてしまいました。
 この本は、私にとって、自分の行動が自分に何かを教えてくれたような感じがした本です。最初から順を追って読むのも良いし、私のようにちょっとマヌケな読み方をしても良いし、チップス先生を想像して楽しむのも良いと思います。自分なりの方法で楽しんで読んでほしいと思います。

推薦者(所属) 鈴木 忍 氏 ( 神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

兎の眼

(※この表紙は旧版の表紙です。現在は新装カバーで刊行されています。)

『兎の眼』
 灰谷健次郎 著  理論社


 「教師になりたい。」と言う私にこの本を薦めてくれたのは、母でした。優しい子どもたちの思いやりあふれるストーリーに感動し、自分もそういう世界に飛び込むのだという期待に胸膨らんだのを覚えています。
 大学を卒業したばかりの、お嬢さん新米先生"小谷先生"が1年生の担任となります。そのクラスには、個性的な子どもたちがいっぱい。特に鉄三という、一言もしゃべらない、教科書も開かない、ノートは真っ白、友だちとも遊ばない、何もしない男の子がいます。その鉄三がカエルを2つに引き裂き、それを見た小谷先生が職員室に駆け込み、吐き、泣く場面からこの物語は始まります。「子どもたちの心は真っ白で、天使みたい」と思っていたところにいきなり洗礼を受けてしまうのです。
 この後にも、このクラスには次から次へと事件が起こっていきます。そんな中で、たくましく、成長していく先生を応援したくなります。 この本を読み返すたびに、考えることや心に残るところが毎回変わっていきます。それは、自分自身の心や環境の変化なのでしょうか。こんな理想論みたいにはいかないと思いつつ、素直に感動して涙が出そうになります。
 厳しい現実の中でおぼれそうになったとき、人の温かみを感じられるこの本を読んで素直に感動してみてください。

推薦者(所属) 加藤 佳代 氏 (神奈川県立図書館横浜駐在事務所)

ぼくを探しに

『ぼくを探しに』
 シェル・シルバスタイン 著
 倉橋由美子 訳   講談社


 不思議な本です。
 笑っちゃうくらいシンプルな白と黒だけの絵なのに・・・、そぎ落とすだけそぎ落とした単純な文なのに・・・。読み手のその時の状況や心情によって、本から伝わってくるものが全く変わってしまいます。
 なんかちょっと疲れちゃったとき。誰かに認めてもらいたいとき。うれしいとき。恋をしたとき。ほっとしたいとき。 泣きたいとき。 笑いたいとき。 そして、「本当の自分を見つけたい」「生まれた意味を知りたい」なんて自分探しに悩んでいるとき。 いつでも、どんな時でも、その時のあなたに合わせてこの本はいろいろなことを語りかけてくれます。
 「何かがたりない それでぼくは楽しくない」とつぶやくぼくの「かけら」探し。その旅の途中で、ミミズとお話をしたり、お花の香りをかいだり、カブトムシと追いかけっこをしたり、こんな愉快なことはありません。いろんな「かけら」との出会いと別れを繰り返しながら、ぼくはついに自分の「かけら」を見つけます。やった!ばんざい!ぴったりだ。でも・・・「なるほど つまりそういうわけだったのか」・・・ぼくは気づきます。
 何かがたりない「ぼく」が気づくとき、読み手である「あなた」も何かに気づきます。その気づきは、人それぞれであるだけでなく、あなた自身も常に新鮮な気づきを楽しむことができます。
 すぐそばにそっと置いておきたい。そんな不思議な本です。

推薦者(所属) 中山 賢一 氏 (神奈川県教育委員会教育局湘南三浦教育事務所)

百まいのドレス 『百まいのドレス』
 エレナー・エスティス 著
 石井桃子 訳
 ルイス・スロボドキン 絵  岩波書店


 1944年にアメリカで出版された物語は、今でも、子どもや子どもを見守る人たちに、いろいろな事を語りかけています。
 (日本では、1954年に『百枚のきもの』の題名で出版され、2006年に『百枚のドレス』として改訳されました。)
 この物語は、ポーランド人移民ワンダをめぐる出来事を、クラスメイトのマデラインの気持ちを通して語られています。
 「あたし、うちに、ドレス百まい、持ってるの。」という一言から、クラスの友だちがワンダをからかうようになります。マデラインは、荷担したくない、と思いながらも、自分がからかわれるのはいやだと思っています。それまで気にも止めなかったワンダの存在、からかいを続ける親友ペギーへの思い等、マデラインの心情がきめ細かく描写されています。
 ワンダは百枚のドレスの絵を残し、他の町へと引っ越します。そして、その百枚のドレスの絵に描かれていたものは・・・。
 「こんどからは、何にもいわずに、そばでだまって見てなんかいないこと。」
 マデラインの言葉は、もう一度見つめ直したい言葉ではないでしょうか。

推薦者(所属) 井手 祥子 氏 (神奈川県教育委員会教育局中教育事務所)

ラチとらいおん 『ラチとらいおん』
 マレーク・ベロニカ:文・絵
 徳永 康元 訳   福音館書店


 主人公ラチは世界中で一番弱虫な男の子。犬を見ると逃げ出します。暗い部屋には怖くて入れません。友だちでさえ怖くて、仲間外れのラチはいつも泣いていました。ラチの友だちは絵本のらいおん。とても強そうで「ぼくに、こんならいおんがいたら、なんにもこわくないんだけどなあ」(本文より)
 ところがある朝、小さな赤いらいおんがラチの部屋にいるのです。らいおんは小さいけれど、とても力持ちで、とても強かったのです。「きみもつよくなりたいなら、ぼくがつよくしてやるよ」(本文より)ラチはらいおんといっしょに体操をします。相撲もします。暗い部屋に入る練習もします。弱虫だったラチも、小さならいおんをポケットに入れて外に出るととても強くなったような気がしてきました。
 そんなある日、ラチは犬に怯える女の子を助けます。ポケットの中のらいおんが守っていてくれたおかげで勇気が出せたのです。また、別の日には男の子にボールを取られてしょんぼりしている仲間たちに出会います。らいおんと一緒のラチは見事ボールを取り返します。らいおんにお礼を言おうと思ったラチがポケットに手を入れると、そこにあったのは…。
 らいおんはラチの行く手に立ちはだかる困難からラチを力で守るのではなく、一緒に強くなるための訓練をしました。ラチはらいおんから勇気をプレゼントされることで、自分の人生を切り開いていく自信も同時に手にしました。この絵本は、誰でもきっかけ次第で強くなれることや勇気を出して困難に立ち向かっていく大切さを教えてくれます。ラチにとってのらいおんのような存在に、いつか出会えることを願っています。

推薦者(所属) 遠藤 悟 氏 (神奈川県教育委員会教育局足柄上教育事務所)

平成23年度に書かれた推薦文

考えるヒント 『考えるヒント』
小林 秀雄 著  文春文庫


今でも、小林秀雄は、高校の教科書に載っているのだろうか。大層難しかったはずなのだが、どうもそこに魅かれたようで、以来、40年近くの付き合いである。時折、読んだりながめたりしているが、こちらが一向に成長していないらしく、依然としてよく分からないままである。
ある日、県立図書館へ行って、「小林秀雄を分かるようになる何かいい本はありませんか」と聞いてみたことがある。司書の方が書庫から持ってきてくれたのは、大岡昇平の本で、「この人は、若い頃から小林秀雄の近くにいた人で、文章もずっと読みやすいから、こういうのを読んでみる方法もいいですよ」と、薦めてくれた。
その本を読んで、幾つか、納得したり思いあたったりしたことがあった。小林秀雄の作品には、カントだの、プラトンだの、哲学の話がよく出てくる。どうして小林秀雄は、こんなに難しいことばかり書くのかと思っていたが、彼の時代の旧制中学では、哲学を教えていて、彼も熱心に勉強していたらしい。もう一つ、大岡昇平は、小林秀雄の文章には詩的なところがあるとしていて、なるほど、高校生の私が惑わされた、あの"かっこよさ"は、"詩"的なものであったか。
そもそも、日本の知性の代表のようにも言われる人なのだから、その何十分の一の本も読まずに彼の本が分かるはずもない。だからこそ、小林秀雄という読書の達人の後を追いかけて、いろいろな本を読むことに挑戦してみることは、読書の一つの方法だろうし、たのしみだろうと思う。なにしろ、日本の古典からロシア文学、ゴッホからモーツァルトまで、ひろがっているのだから。
小林秀雄は、講演の名人とも言われている。少し早口の、しかし、落語の名人を聴くような、味のある語り口である。でも、最初は、是非、難解かもしれないが、その魅力的な文章にふれてみてほしい。
久しぶりに読み返して、「平家物語」がおもしろかった。今、NHKでやっている「平清盛」とは、随分と趣の異なった平家武者の姿にふれられると思う。

推薦者(所属) 福地 賢一 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

ないた赤おに 『ないた赤おに』
浜田 廣介 著  いもと ようこ 絵   金の星社

 「めでたし めでたし」で終わることの多い童話のなかで、赤おにが泣いて終わるという悲しい結末に、子どもの時は何か心残りを覚えて本を閉じたものでした。青おにの友情の物語で終わっていいのかな…。それ以来、様々に話の続きを考えました。赤おには、青おにの行方をさがしに行ってほしいな、そして前のように仲のよい友だちにもどってほしい。でも、人間には本当のことを言うのかな。本当のことを言ったら人間は赤おにと仲良くするだろうか。そうだ、人間に本当のことを言って、人間も一緒に青おにを迎えに行ったら、青おにも戻ってきてくれるかも。大人になって読み返しても、いろいろと思いが巡ります。ハッピーエンドって何だろう。

推薦者(所属) 安田 恵美子 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

海の都の物語 海の都の物語』ヴェネツィア共和国の一千年
塩野 七生 著   新潮文庫


世界的な観光地となっている北イタリアの都市、ヴェネツィアは、かつて「アドリア海の女王」などと呼ばれ、地中海貿易や手工業で栄えた都市国家でした。この本は、ローマ帝国滅亡後、他国からの侵略と乱立する都市国家間の争いの中で、千年以上もの間、独立を守り、繁栄したヴェネツィア共和国の興亡の物語です。
世界には、「東洋のヴェネツィア」「小ヴェネツィア」と呼ばれる都市が沢山あります。しかし、それらの都市とヴェネツィアが決定的に異なるのは、ヴェネツィアが「水の都」ではなく「海の都」である、つまり都市の中に運河をつくったのではなく、海の中に都市を作ったというところです。4世紀、最初に今のヴェネツィアに住んだ人々は、なぜ海の中に街をつくって住まなければならなかったのか。やがて地中海貿易で大きな繁栄を築くヴェネツィアとジェノヴァなど他のイタリア都市国家、あるいは、ビザンツやオスマントルコ、スペインなどとの争いの中で、この小さな共和国が、どうやって生き延びていったのか。十字軍やビザンツ帝国の滅亡、レパントの海戦等、日本人には、少し馴染みの薄い歴史上の出来事も鮮やかに描かれ、世界史への興味を持つきっかけになると思います。
文庫本で全6冊の大作ですが、一気に読むことができます。随所に作者の「国家観」やイタリアへの熱い思いもうかがえます。ただ、これは、あくまでも小説であるということを間違えないでください。この小説で世界史に興味を持ったなら、本格的な歴史書を読んでみてはいかがでしょうか。

推薦者(所属) 荻野 賢 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

ごめんね ともだち 『さぶ』 山本 周五郎 著  新潮文庫


これは、江戸時代のお話です。何でも上手にできる元気のよい栄二と、何をやっても失敗ばかりのおとなしいさぶ。二人は同じ店に勤めるふすまや障子を作る職人です。対照的な二人ですが、お互いに自分にないところを認め合う親友です。
ところがある日、栄二に無実の罪が着せられます。お得意さんの家でなくなった高価なきれが、栄二の道具袋の中に入っていたのです。盗んでいないのですが、信じてもらえません。
やけになって町で暴れた栄二はつかまってしまい、何もしゃべろうとしないので人足寄場に送られます。
世の中が信じられなくなった栄二と、ひたすらに彼を信じ続けるさぶ。無実の罪の真相は何なのでしょうか、栄二はこのまま心を開かないのでしょうか。
やがて、人足寄場での様々な立場の人との出会いが、栄二の心に少しずつ影響を与えていきます。どのように変わっていくのかを、実際に読んで確かめてみてほしいと思います。
登場人物の心の動きや、それぞれの人生が生き生きと描かれているところが、山本周五郎作品の魅力です。読み始めてみて難しいと感じた場合には、大人になってから、ぜひもう一度チャレンジしてみてください。

推薦者(所属) 西澤 一志 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

ちゃんがら町 『ちゃんがら町』 山本 孝 著  岩崎書店


思い切り遊びまわった小さいころのワクワクした気持ちがよみがえってくるお話です。機会があれば、ぜひ、子どもたちに読み聞かせてあげたい絵本の一冊です。会話は、関西弁なので練習が必要ですが、独特のイントネーションで読むところから、このお話の魅力が伝わっていくように思います。
駄菓子や、きもだめし、秘密基地から商店街へと豊かな自然と遊び場あふれる「ちゃんがら町」で、あばれ楽しむ子どもたちの様子に、心が躍らされます。

推薦者(所属) 廣瀬 修一 氏 (神奈川県教育委員会教育局県央教育事務所)

君たちはどう生きるか 『君たちはどう生きるか』 吉野 源三郎 著   岩波文庫


私の人生の大先輩に「中学生にお薦めの一冊、先生だったらどんな本を紹介しますか?」と尋ねると「『君たちはどう生きるか』を読んでほしいなあ」という返事がありました。
職場の同僚に「『吉野源三郎』って中学時代に読んだ?」と聞くと「コペル君でしょう?今も時々読むよ」との答えが返ってきました。
生徒のいない中学校の図書室で『君たちはどう生きるか』という題名の力強さに惹かれ、何度となく読んだ本。何年かぶりに読み返してみました。
主人公は中学2年生の本田潤一、あだ名はコペル君。コペル君の疑問におじさんが答える形で話は進みます。おじさんのノートには様々なことが書かれています。「ものの見方」「真実の経験」「人間の結びつき」・・・中学校の生活の中で起こる出来事を通してコペル君は考え、悩み、成長していきます。
今から75年も前に書かれた作品ですが、「いじめ」や「上級生とのトラブル」など現代の中学生にも通じるところが多くあります。難しい言葉もあるかもしれませんが、たまにはじっくりと本と向き合う時間を作ることも必要ではないでしょうか。
この本の結びの一文は「君たちはどう生きるか」です。この問いの答えは簡単には見つからないと思います。見つからないからこそ、考え、自分なりの答えを探してみてください。

推薦者(所属) 西田 孝予 氏 (神奈川県教育委員会教育局足柄下教育事務所)

平成22年度に書かれた推薦文

小さいつが消えた日 『小さい"つ"が消えた日』
ステファノ・フォン・ロー 著 /トルステン・クロケンブリンク 絵


本屋さんでふと見つけたのがこの本のかわいいイラストでした。しかし、次に疑問がわいてきました。小さい"つ"とはいったい何だろう。
本を開くとそれはすぐに分かりました。小さい"つ"とは「言った」「買った」などに使われる"つ"のことでした。その小さい"つ"が消えたら、「言った」が「板」に、「買った」が「肩」になってしまい意味が変わってしまいます。
この物語は、五十音村に住む文字の妖精たちの物語です。いばりんぼの"あ"、優柔不断な"か"、謙虚な"ん"など、さまざまな妖精たちが宴会で自慢話をしていると、誰かが、小さい"つ"は音がないから一番偉くないと言い出します。小さい"つ"は悲しくなり、家出をしてしまいます。小さい"つ"がいなくなり、文章が成り立たなくなって、世の中は大騒ぎです。妖精たちは自分たちが悪かったとみんなで協力して"つ"を探します。家出をした"つ"は旅の途中でさまざまな出会いをして、多くのことを学んで元気を取り戻していきます。
この世の中、必要でない人なんていません。みんなそれぞれの役割があり大切だとこの物語は教えてくれます。そして、読み終えた後、ホッとするような、温かい気持ちになります。
ぜひ、ご家庭や、学校でこの本を読んでもらえればと思います。

推薦者(所属) 中世 貴三 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

塩狩峠 『塩狩峠』
三浦 綾子 著 新潮文庫


主人公の永野信夫は、小学校時代のある約束をきちんと守ることによって、人生が大きく変わっていきます。人との出会いが劇的に人生を変えてしまったといってもよいでしょう。そして、人間関係、恋愛、宗教や性など人生に直面するであろう問題に悩み・戸惑う姿がそこに描き出されています。
三浦綾子の作品は、どの作品もそうであるように、人間の純真な心や醜い心、感情や欲望がストレートに表現されています。特にこの「塩狩峠」は秀逸であり、人間の存在意義そのものを考えさせられる小説です。物語の最後は、主人公信夫の乗った列車が、突然暴走を始めるのですが、その後の本人が取った行動が描かれています。私には、とても信じられない結末ですが・・・。
皆さんも人生ってなんだろうと考えたことがあると思います。私も考えたことはありますが、答えは出るものではありません。でも、この三浦綾子の作品は何かヒントを与えてくれると思います。ぜひ、読んでみてください。

推薦者(所属) 森 友良 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

であえて ほんとうに よかった 『であえて ほんとうに よかった』
宮西 達也 作・絵  ポプラ社


むかしむかし おおむかし。らんぼうもののティラノサウルスと泣き虫のスピノサウルスの子どもが海岸の波打ちぎわで出会うところから物語は始まります。
「こんなところで おれに であって、ざんねんだったな」(本文より)
と、ティラノサウルスが大きな口をあけてスピノサウルスに近づいたとき、大きな地震がグラグラグラ。気がつくと、地面は二つに分かれ、小さな島となり、ふたりともとり残されてしまうのですが…。
人気絵本「ティラノサウルスシリーズ」第8弾のお話です。第1弾の「おまえ うまそうだな」は、2009年にアニメ映画化されています。この絵本の初版は2003年であり、子どもから大人まで、長く長く親しまれています。
この「であえて ほんとうに よかった」は、とてもおもしろく、おかしく、ちょっとかなしいお話です。相手のことを思うこと、そんなやさしさがたくさん詰まっているお話です。

推薦者(所属) 菴原 典子 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

ごめんね ともだち 『ごめんね ともだち』
内田 麟太郎 著 /降矢 なな 絵  偕成社


キツネとオオカミの友情を描いた絵本「おれたち、ともだち」シリーズの一冊。
オオカミは、キツネにダーツやけん玉でも負けてしまい、得意なトランプでも大負けしてしまいました。頭にきてしまったオオカミはキツネの椅子をけっとばして「いんちきは、このうちから でていけ!」とどなって土砂降りの雨の中、傘もかさずに家から追い出してしまいました。キツネも怒って帰っていきました。
負けた悔しさから、つい怒鳴ってしまったオオカミは後悔して謝ろうと思いますが、心の中では言える「ごめん」の一言がなかなか言えません。 キツネもオオカミとまた遊びたいけれど、出会ってもそっぽを向いてしまいます。お互いに仲直りして遊びたい気持ちはあるのですが…。
遊びで負けた悔しさから素直になれない気持ち、「ごめん」の一言がなかなか言えない気持ち、仲直りしたいけど自分からなかなか切り出せない気持ち、何度も経験しているのではないでしょうか。読んでいくと心が揺れ動き、読み終わった後にはホッとした気持ちになります。幼児から大人まで楽しめる一冊です。

推薦者(所属) 豊田 政治 氏 (神奈川県教育委員会教育局生涯学習課)

銀河鉄道の夜 『銀河鉄道の夜』
宮沢 賢治 著  新潮文庫


銀河鉄道は、宇宙を旅する。当たり前かもしれないが、その宇宙は空間だけでなく、時間的にも、精神的にも、無限大なのである。私たちは、ジョバンニの同乗者として、まさに「どこまでも行ける」切符を自分のものにすることができるのだ。さらに、人生のどこからでも銀河鉄道には乗ることができる。
まず、子ども切符を持って、初めての旅に出てみよう。ジョバンニが学校で感じた気恥ずかしさや、星々の写真を見てわくわくした心持ちも実感として受け取れる年頃に。汽車に乗ればもう夢の世界だ。星のきらめきもまぢかにあり、「風のように」走れる。科学的な話題もふんだんにあり、120万年前のくるみの化石を見たり、牛の先祖の化石を発掘する学者の話を聞いたりする楽しみもある。
青年期にさしかかって、地上の生活の重さを感じるようになり、精神的に高みを目指す旅はどんなものだろうか。車窓から二つの十字架が見える。白く光る北十字と、「あらゆる光でちりばめられた」サウザンクロスだ。サウザンクロスの駅で降りるのは、タイタニック号に乗っていた青年と子どもたちだ。十字架は天上への道しるべだろう。「女の子」の語る蝎の火のいわれも心に残る。
ところが、物語の旅は、一見天上に見える所では終わらないのである。大人の切符を手に、もう一度汽車に乗る。すると、ジョバンニがずっと抱えていた救い難いほどの孤独が改めて身に沁みるのだ。親友と共にいても、だからこそ感じる寂しさや辛さがある。「どこまでもどこまでも一緒に行こう。」と誓った友とも別れなければならない。ジョバンニが物語の中で汽車から降りるのは、サウザンクロスではなく、暗い「石炭袋」の前なのだ。私たちもその無限の闇を見つめて問いかける。「ほんとうの天上」はどこなのか。「みんなのほんとうのさいわい」は見つけられるのか。そして、旅はまだ続いていくのである。

推薦者(所属) 西部 志津 氏 (神奈川県立図書館横浜駐在事務所)

あしたのねこ 『あしたのねこ』
きむらゆういち 文 /エム ナマエ 絵  金の星社


「あした」ってどんな日なのだろう。
今夜寝て、次に起きたらあしたがやってくる。
当たり前のことだけれど、それは、私が生まれるずっと前から続いていて、これからもずっとずっと続いていくこと。
捨てられて、兄弟の中で1匹だけもらい受ける人がいなかった、やせっぽちで体中の毛はぼそぼそで、ガマガエルみたいな鳴き声のねこ。誰にも相手にされず、雨にぬれ、どぶに落ちかけ死にかける。
そんな時、だれかが自分を見ていたことに気づく。それだけで何だかうれしくなった。「あした」に向かってニャアと泣いてみる。ガマガエルみたいな鳴き声でも自分の声を聞いて元気が出る。
「あらしのよるに」の作者きむらゆういちさんが文を、全盲の画家エムナマエさんが絵をかかれた子どもから大人まで読める絵本。
どうにもならないことは運命として受け入れて、その中の小さな幸せをみつけてみる。「あした」が来るのが、ちょっぴり楽しみになりそうだ。

推薦者(所属) 岩本 純子 氏 (神奈川県立図書館横浜駐在事務所)

だから、あなたも生きぬいて 『だから、あなたも生きぬいて』
大平 光代 著   講談社


弁護士の大平光代さんの半生を描いた自伝です。
波瀾万丈の人生伝としてではなく、人との出会いをきっかけに人生は変わっていき、転落するのも立ち直るのも最終的には本人の気持ちにかかっていることが伝わってきます。人生はいつでも立ち直れるということに気づかされます。
中学校の転校を機にひどい目にあい、そこから太平さんの転落人生が始まりました。
しかし、心のどこかで「悪者にはなりきれない」という気持ちが残っていたことと、転機となる人(のちの養父)との出会いを通して、感謝の気持ちや反省の気持ちを取り戻していき、最難関の試験である司法試験に合格します。
大平さんが、立ち直るきっかけとなった養父からの言葉。
「人生は訓練の場である。失敗もできる訓練の場である。あなたの未来は今この瞬間にある。」「道を誤ったのは、あなただけのせいやないと思う。周りも悪かったやろう。だけどな、立ち直らないのはあんたのせいやで。甘ったれるな。」
大平さんは、この言葉を聞いて過去と決別し、恨みや悔しさに向けていたエネルギーを資格試験突破へ注ぎ、挑戦を続けて、ついには司法試験に合格しました。
本文最後は、「あきらめたらあかん。今の苦しみは永遠に続かない。前向きに進んでほしい。」と大平さんからのエールでしめくくられています。
今、悩んでいる人・苦しんでいる人の心の励みになる一冊です。

推薦者(所属) 川口 義和 氏 (神奈川県教育委員会教育局湘南三浦教育事務所)

カラフル 『カラフル』
森 絵都 著 /  文春文庫


友だちや他人とのつきあいの中で、裏切られたり、怒りを感じたり、何かに不安を感じたり、迷いを感じたり、「あの時、あんなことしなければよかった」「あんな言い方するんじゃなかった」などと後悔をしたりしたことはありませんか?
自分が見たこと、聞いたこと、それによって感じたこと、考えたこと、行動したこと、それらはすべて真実だったのでしょうか?あるいは真実に基づいたことだったのでしょうか?「私は本当に裏切られたの?」「あの人は本当にいじわるをしたの?」真実を知るために、あなたならどうしますか?
生前の過ちにより輪廻のサイクルから外されてしまった魂が、再び輪廻のサイクルに戻るために用意されたチャンスは、自らの手で命を絶った真(まこと)の体にホームステイをし、期間内に自分が犯した過ちについて思い出すというものでした。真は自分の家族、思いを寄せていた同級生に裏切られたと思い、自ら命を絶ちました。しかし真の体にホームステイしている魂が、真として生活を送っていく中で、家族や同級生の本当の思いを知ったとき、真を取り巻く世界は鮮やかな彩りを放ち始めます。それと同時に陽だまりの中にいるような暖かさを感じる、そんな話です。

推薦者(所属) 内田 源一郎 氏 (神奈川県教育委員会教育局湘南三浦教育事務所)

ねらわれた学園 『ねらわれた学園』
眉村 卓 著 /緒方 剛志  講談社


校内の風紀が乱れる中、高見沢みちるが生徒会長になってから学校が変わり始める。圧倒的な力で生徒会を支配し、反対者を不思議な力で抑え、学校の風紀を取り締まるという名目でパトロール委員を新設し、学校を支配し始めた。彼女の強引なやり方に反感を持った主人公関耕二とその同級生は生徒会に戦いを挑む。
今から30年ほど前、中学生だった時、それまで「本を読まない」と言われていた私を変えてくれた作品の一つです。当時、この作家の作品を買いあさり、暇を見つけては読んでいました。その中でも、この作品は何度も映画化、テレビドラマ化されたものであり、当時、大変ポピュラーでした。
誰にでも親しみやすい公立中学校を舞台とする一方で、SFであることから、創造力をかき立てられると同時に、読み手が作品に引き込まれる優れた作品です。
執筆されてから40年近く経過している作品ですが、今読んでも新鮮さを感じることができます。この作品と共に『なぞの転校生』『まぼろしのペンフレンド』『ねじれた町』の3作品も、講談社により復刻されており、どれもおすすめです。

推薦者(所属) 下原 修 氏 (神奈川県教育委員会教育局中教育事務所)

ちいさいおうち 『ちいさいおうち』
バージニア・リー・バートン 文・絵 /石井 桃子 訳  岩波書店


静かな田舎に、ちいさいおうちがありました。おうちは、季節ごとに変わる自然の美しさや、太陽、月、星のめぐりをのんびりとながめています。 時はたち、ちいさいおうちのまわりにあった景色は人々の手によって姿を変えていきます。
のんびり過ごしていた人々の様子も変わっていきます。
ちいさいおうちはその場所で、変わりゆく町をどんな気持ちで見つめていたでしょう。
そんな中、ある出来事が起こります。
この絵本を読むと、文明が進んだ現代において忘れがちな大切なものに気付かされます。
絵も素敵な作品です。

推薦者(所属) 古住 有美 氏 (神奈川県教育委員会教育局中教育事務所)

ファーブル昆虫記 『はてしない物語』
ミヒヤエル・エンデ 著   岩波書店


私は幼い頃、道端に咲く一つ一つの花には妖精が住んでいて、皆が寝静まった夜更けには、毎晩のように華やかな舞踏会が繰り広げられていると信じていました。そして、そんな想像力を高めてくれる数々の本は、私の大切な友だちでした。
その後も、読書の楽しみは色あせることなく、自分と向き合うための必要不可欠なものになっていますが、この本を初めて手にしたときは、本の装丁や文章の工夫に圧倒され、「こんなにおもしろい児童書には出会ったことがない」と感じるくらい夢中になりました。そして、何歳になっても、豊かな感受性と想像力は大切に育てていきたいと心から思ったものでした。
この物語は、読書好きの少年バスチアンが何気なく入った古本屋で「はてしない物語」という本を見つけるところから始まります。
崩壊しかけた王国を救うために、バスチアンはどんな冒険を体験するのか、そしてどんなことを学ぶのか、ぜひ読み味わって欲しいと思います。きっと誰もが、主人公になっているような錯覚を感じながら作品にのめり込めるはずです。

推薦者(所属) 奥脇 裕子 氏 (神奈川県教育委員会教育局県央教育事務所)

風が強く吹いている 『風が強く吹いている』
三浦 しをん 著   新潮文庫


陸上競技は孤独との戦いである、と何かの本で読んだことがあります。学生時代からずっと陸上競技を続けてきた私にとっては、孤独との戦いは、自分を強くするための大切な通過点でした。
この話の中に登場する学生たちも、走ることに魅せられ、走るという行為を通して、少しずつ自分自身を高めていきます。
今や正月のビッグイベントの一つとなっている「箱根駅伝」に出場するという大目標を掲げた、わずか10人という陸上競技部員。さまざまな課題と向き合いながら、さらに上を目指して走る者、初めて風を受けて走る醍醐味を味わった者、走ることに真剣に向き合ったことがない者・・・登場人物たちはみな個性的です。彼らは共同生活の中で、個性をぶつけ合い、一人ひとり、少しずつ変化を遂げていきます。その様子は、まさに人生そのものを表しているかのようです。
陸上というスポーツを通して、人生とは何か、を気付かせてくれるすばらしい一冊です。ぜひ、箱根駅伝を走るランナーになって、スピード感あふれる文章を堪能してみてください。

推薦者(所属) 大場 一子 氏 (神奈川県教育委員会教育局県央教育事務所)

夢をつかむイチロー262のメッセージ 『夢をつかむイチロー262のメッセージ』
「夢をつかむイチロー262のメッセージ」編集委員会  ぴあ株式会社


「夢をつかむことというのは、一気にはできません。ちいさなことをつみかさねることで、いつの日か、信じられないような力を出せるようになっていきます。」「そのことはまだ、目標というよりは夢ですが、これがだんだん近づいてくると、目標に変わってきます。」
日々の積み重ねの大切さを感じさせてくれる貴重な一言です。わたしたちは、つい結果やゴールばかりを追い求めてしまいます。しかしそれは、積み重ねの結果であり、その結果がいつかゴールにつながって行くことを262のメッセージは語っています。
いつも自分らしさを失わず、目標をしっかりつかみ、前に進む。簡単なことであるかのようで、とても難しいことです。悩み、くじけそうになったとき、それを乗り越えるヒントが、きっとこの本の中から見つかると思います。
元気になりたいとき、そっと心の中で読み返してほしい一冊です。きっとあなたの「夢をつかむ」ことにつながる一言が見つかるはずです。

推薦者(所属) 太田 正則 氏 (神奈川県教育委員会教育局県央教育事務所)

くじけないで 『くじけないで』
柴田 トヨ 著  飛鳥新社


この本は、90歳を過ぎてから詩作に出会った柴田トヨさんの作品を集めた詩集です。産経新聞や下野新聞に掲載されたものを中心に42作品が収録されています。
子どもの頃の思い出や日常の何気ない出来事、時折訪ねてくる息子と過ごすひとときなど、読みながらその時の情景が思い浮かんで来るような飾らない自然な表現が魅力です。
また、DVDには、詩を朗読するトヨさん自身が収録されており、ゆっくりと一言一言を大切にする語り口調に心が温まります。
98歳になった今も詩作を生きがいに、元気に暮らしているそうです。「夢は、自分の詩集を世界中の人に読んでもらうこと」と語るトヨさん。皆さんも、前向きに生きるトヨさんの詩集から元気をもらってみてはいかがですか。

推薦者(所属) 小畑 利幸 氏 (神奈川県教育委員会教育局足柄上教育事務所)

おじいさんならできる 『おじいさんならできる』
フィービ・ギルマン 著・絵 /芦田 ルリ 訳  福音館書店


ヨゼフが生まれたときにおじいちゃんが縫ってくれた素敵な青いジャケットは、おじいちゃんの手によって大変身!ジャケット、ベスト、その次は・・・最後には・・・ 「『おじいちゃんならきっとなんとかしてくれるよ。』『ふうむ、どれどれ?』はさみでちょきちょきちょき、はりでちくちくすーいすい。『ちょうどいいものができるぞ。』」汚れて小さくなっていくたびに繰り返されるこの言葉に期待感が高まります。
絵本の中には、床下に住むねずみの一家のもうひとつの物語も。隅から隅まで読む(見る)と、そこにも素敵な発見があります。
心からヨゼフを愛しているおじいちゃんと、おじいちゃんのことが大好きなヨゼフの心の交流に胸が温かくなり、物を大切にするって素敵だなという気持ちも芽生えさせてくれるそんな一冊です。
子どもも大人も、繰り返し読めば読むほどファンになること間違いなし。
「ほら、ぼくとおじいさんのこのすてきなおはなし!」

推薦者(所属) 布施 好美 氏 (神奈川県教育委員会教育局足柄上教育事務所)

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
岩崎 夏海 著  ダイヤモンド社


この本は、中学3年生の野球部の息子たちが顧問の先生から薦められた一冊です。「高校野球のマネージャー」が「マネジメント」・・・?いったいどういうことでしょう。
高校野球といえば、『めざせ甲子園』。しかし、この物語にでてくる野球部は、監督も選手も覇気がなく、練習も結構いい加減にやっているから『甲子園』なんて言葉はだれも口にしなかった、いや、考えもしなかったのです。そんな野球部が、3年生最後の夏の都大会であれよあれよという間に勝ち進み、甲子園に手が届くところまできてしまいます。なぜ、これほどまでに強くなっていったのでしょう。
その訳は「マネジメント」にありました。野球とは無関係の「企業経営」について書かれた「マネジメント」という本で変わったのです。女子マネージャー「みなみ」が、経営学の父と呼ばれるドラッカーが書いた「マネジメント」を読み、それを次々に野球に応用していき、野球部はみるみるうちに強くなっていきました。
例えば、その本には「人は最大の資産である」「人の強みを発揮させる」と書いてあります。みなみはこれを野球に生かし、攻撃、守備、走塁の担当をそれぞれ最も得意な選手に任せました。また、試合にあって練習にない「競走、結果、責任」の3つの要素をふくむ「チーム制」の練習を取り入れ、みんなのモチベーションが高まっていたのです。
企業経営の「マネジメント」がこんなに高校野球に合うとは思いませんでした。いや、全てのスポーツに合うかもしれません。この物語は、スポーツが好きな方や経営学に興味のある方など、いろいろな方にお薦めの一冊です。

推薦者(所属) 北村 和裕 氏 (神奈川県教育委員会教育局足柄下教育事務所)

ハリー・ポッターと賢者の石 『ハリー・ポッターと賢者の石』
J.K.ローリング 著者/松岡 佑子 訳者/ダン・シュレシンジャー 表紙画  静山社


全7作の小説とその映画化で、世界中のファンを熱狂させた大人気シリーズです。
作品を読んだことのない人でも「ハリー・ポッター」という名前を聞いたことのある人は多いでしょう。いや、世界中でベストセラーの小説ですから、作品を読んだ人も大変多いと思いますし、映画を見た人も合わせると、この作品を知っている人の数は膨大なものになると思います。
本作はその記念すべき第1作目です。自分が魔法使いであり、魔法界では多くの人々に尊敬されていることを知らずにマグル(人間)の世界で不遇に育ってきた主人公ハリーが本当の自分の姿を知り、魔法学校ホグワーツに入学していきます。そこでロンやハーマイオニーなど多くの友達や尊敬すべき人と出会い、友情を育み、冒険をし、そして宿敵ヴォルデモートとの戦いを繰り広げます。
ハリーは様々な出会いと別れ、冒険を通じて強く成長していきます。どんな困難にも勇気と知恵を持って立ち向かい、乗り越えていくハリーとその仲間たちの友情が、読む人の心を引きつけて離しません。また、随所にちりばめられた謎や伏線が読み進めていくうちに少しずつ明かされていくストーリー展開は、一度読み始めたらやめられなくなってしまいます。
数々のゴーストやしゃべる肖像画などのユニークな登場人物、蛙チョコレートや透明マントなど、魔法の世界がユーモア一杯に描かれているのもこの作品の魅力です。
挿絵もほとんど無いにもかかわらず、多くの子どもが夢中になって読んでいるようで、この作品をきっかけに読書の楽しさを覚えた子どもも多いことでしょう。
子どもから大人まで、誰もが親しむことが出来る作品です。ぜひ、読んでみてください。

推薦者(所属) 橋 大明 氏 (神奈川県教育委員会教育局足柄下教育事務所)

平成21年度までに書かれた推薦文

ファーブル昆虫記 『昆虫記』
ファーブル 著 /大岡 信 訳  河出書房新社


子供たちがまだ幼い頃、寝かしつけるときに、お話をせがまれました。「昔々あるところに・・・」と、何回か話しましたがすぐにネタが尽きてしまいました。そこで、本棚にある本を読むことにしたのですが、子どもたちには難しすぎたり、文の切れ目がわからなくなったりするのです。そんな中で大人気だったのがこの本でした。 しかし、3人の子をいっしょに寝かしつけていたので、ある子は「もっと先を読め」と言うし、別の子は「昨日は先に眠ってしまったから、昨日のところをもう一度読め」と言うし、その日の分を読み始めるまでに毎日ひと悶着が起きました。
翻訳は朝日新聞の「折々のうた」を書いている方です。身近に見られる虫の話だけを選んで、親切な美しい言葉で書いてあります。自分の目で見て自分の頭で考えたことしか信用しないファーブルと大岡信の合作です。
最初はセミの話です。「セミが姿をあらわすのは、毎年夏至のころです。熱い太陽にやかれ、通りがかりの人々にふみかためられてかたくなった地面に、ぽっかりと親指が入るくらいの丸い穴があきます。この穴の奥からセミの幼虫は出てくるのです。」と始まります。その後は、コオロギ、カマキリとおなじみの虫の話が続いていきます。
ファーブルの書いた中身もさることながら、日本語のお手本としてもお薦めいたします。ただ、この本は現在品切れとなっていますので、岩波少年文庫の「ファーブル昆虫記」(大岡 信 編訳)もあわせて紹介します。内容はほぼ同じです。また、図書館等もご利用ください。

推薦者(所属) 冨田輝司 氏 (前神奈川県子ども読書活動推進会議委員)

海底二万里 『海底二万里』
ジュール・ヴェルヌ 著 /荒川 浩充 訳  東京創元社


私たちの国は、四方を海に囲まれています。その海は生命の源でありますが、同時に、私たちに多くの恵みをもたらし、私たちの暮らしを支えています。また、古くから海は天とともに未知なるものとして、私たちの知的関心の対象となってきました。私も海のある街に育ちましたので、小さいときから海に親しんできました。海をテーマとした子供向けの本は多くありますが、私は、ジュール・ヴェンヌの「海底二万里」をお勧めします。 
ネモ船長の潜水艦「ノーチラス号」の乗員の一人になって、世界の海をめぐり海底の様子やそこに棲む様々な生命に触れることができます。 今日、世界には、日本の「しんかい2000」をはじめとする多くの深海調査船があり、お話の世界が現実の世界になっていますが、この本が、多くの子供たちに科学する心、夢と想像力を与えてくれることに変わりはないと思います。

推薦者(所属) 金子皐一 氏 (元生涯学習文化財課長)

かいじゅうたちのいるところ 『かいじゅうたちのいるところ』
モーリス・センダック 著 /神宮 輝夫 訳  冨山房


「昔読んだ絵本の中で何を覚えている?」と成人式を前にパーマをかけてきた息子に聞いた。「そうだな、いろいろあるけど、かいじゅうとぐりぐら、それから...」結果は大体予想していた通りだった。そういえば、あのかいじゅうおどりのところで、「チャチャラカチャン」とメロディーを勝手につけて歌ったことを思い出した。そのあと「かいじゅうが笑っているあの顔が《きもかった》」という息子の言葉を初めて聞いて、あの表情がなんともいえず、いいなと思っていた自分には意外だったけれど、ハレの日を前に、さすがにお前のパーマの方が「きもい」とは言えなかった。隣の部屋から「あの足の方が気持ち悪かったわよ」という妻の声が聞こえた。

推薦者(所属) 中山耕造 氏 (神奈川県子ども読書活動推進会議事務局)

泣いた赤鬼 『泣いた赤鬼』  浜田 広介 著    偕成社


青おには、人間と仲良くなりたいという赤おにの願いをかなえてあげるために、悪者になっただけでなく、家を離れ長い旅に出てしまいます。
大切な友だちのために、自分ならどこまでしてあげられるのでしょうか。青おにのように友情のためにすべてを捨てることができるでしょうか。
この物語に触れるたびに、友情の素晴らしさ・美しさを感じるとともに、二度と戻らないかも知れない旅に出た青おにの幸福を祈らずにいられません。
皆さんもこの物語を通して、友情について考えてみませんか。

推薦者(所属) 杉山繁雄 氏 (厚木市立厚木小学校)

星の王子さま 『星の王子さま』  サン=テグジェペリ 著 / 内藤 濯 訳    岩波書店


この本は、子ども向けのファンタジーとして楽しめる本でもあり、「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。」と冒頭にあるように、子どもの心を忘れてしまった大人に向けた本でもあると思いますので、お子さんと一緒に保護者の方も読んで考えさせられるところがあるのではないでしょうか? 王子が訪れた小惑星で出会うのは、いずれも愚かさを風刺的に表現された大人たちであるし、子どもの心を持ち続けようとする「ぼく」も、王子の話を真剣に聞かなかったりします。 いつになっても、子どもの頃の純真な心を忘れず、大切なものをしっかりと見据えていきたいですね。

推薦者(所属) 野崎裕司 氏 (神奈川県子ども読書活動推進会議事務局)

はらぺこあおむし 『はらぺこあおむし』
エリック・カール 著 / もり ひさし 訳    偕成社


思わず「じゃ〜ん」
本を開いた瞬間から、カラフルですてきな色の世界が広がり、わくわくします。
あおむし君が、いろいろなものを食べて、成長して、きれいな蝶になるまでのお話ですが、 その食べていくものがさまざま。子どもの好きなお菓子や果物がたくさん出てきます。
食べた所には、虫食い穴のような穴も開いていますので、きっと子どもたちは、穴に指を入れて楽しむでしょう。でも、あおむし君がお腹をこわしてしまう場面では、「あおむし君、だいじょうぶ?」と心配する子も。自分とあおむし君を重ねあわせて読み進んでいくことでしょう。
そして、ラスト。大きい本いっぱいに描かれたカラフルな色づかいには何度見ても圧倒されます。そのページをめくる時、きっとあなたは思わず「じゃ〜ん」と言いたくなりますよ。
読んで楽しい。見て楽しい。穴が開いていてしかけがあって楽しい。いろいろ楽しめる1冊ですよ。

推薦者(所属) 及川圭介 氏 (三浦市教育委員会)

密林 きれいなひょうの話 『密林 ― きれいなひょうの話』
工藤直子 著 / 和田 誠 絵    銀河社


猫のようなかわいい顔をしたひょうが主人公。はんてんが自慢のひょうは、ある日、目を覚ますとはんてんがないことに驚く。いえ3枚だけはあった。ひょうは森へはんてんを探しに出かける。
かえる、わにやまんとひひに会う。「ぼくのはんてん見なかった?」と尋ねるのに、ねだられて、残ったはんてんを一枚ずつやってしまう。
かわいそうに思ったまんとひひに教えられて、ちょうちょにはんてんになってもらう。気のいいひょうは、密林―きれいなひょうとなり、幸せいっぱいだ。心がぱっと明るくなる本で子どもたちも喜びます。

推薦者(所属) 塩練雪子 氏 (読み聞かせグループ「すずの会」)

とべないホタル 『とべないホタル』   小沢 昭巳 著  ハート出版


西の空が夕日にそまって、町も田んぼも金色にかがやきだしたころ、ホタルの子どもたちが、いっせいにサナギからかえりました。その中に一匹だけみにくくちぢんだ羽を持つとべないホタルがいました。
仲間たちは、とべないホタルをばかにしたり、仲間はずれにしたりしませんでした。それどころか、皆とべないホタルのことを思っていたのです。それを知った、とべないホタルは大きな涙をこぼしました。
この話には、いじめ根絶へ向けての作者の願いが込められています。皆で支え合い共に生きることの尊さ、思いやりや優しさ、勇気を持つことのすばらしさを、子どもたちへそっと語りかけています。
「君たちは決して一人ぼっちではない。」というメッセージと共に、心いっぱいの感動を子どもたちへ伝えたい。

推薦者(所属)

佐藤正文 氏  (高相津久井教育事務所 社会教育主事)


センスオブワンダー 『センス・オブ・ワンダー』
レイチェル・カーソン 著 / 上遠恵子 訳  新潮社


センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性。作者は、世界中の子どもたちに生涯消えることのないセンス・オブ・ワンダーを授けたいと願い、全編にその思いがちりばめられています。
「わたしは、子どもにとっても、どのように子どもを教育すべきか頭を悩ませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。」と語りかけます。「消化する能力がまだそなわっていない子どもに、事実をうのみにさせるよりも、むしろ子どもが知りたがるような道を切りひらいてやることのほうがどんなにたいせつであるかわかりません。」読み返し、かみしめるたびに重みを感じる一冊です。

推薦者(所属)

山本俊夫 氏  (小田原市立下中小学校)


ハードル2 『ハードル 2』  吉富多美・青木和雄 著   金の星社


いじめによる転落事故から主人公麗音が意識を取り戻し、ほっとして読み終えた前作。 その麗音が再び意識を失う場面から始まる続編。怖くて読みたくない気持ちを奮い立たせ、「麗音がんばれ」と心の中で応援しながらページをめくる。現実はお話のように甘くはないということを知らされる物語。
こんな悲しいことは自分の身近に起きて欲しくないけれど、麗音の心の霧が少しずつ晴れるにしたがって、読んでいる自分の心から、重くどんよりした空気が消え、不思議と読む前よりすっきりと晴れやかな気分が広がる。ここに登場する子どもたちが、一歩一歩大人になっていく姿もすてきだけれど、凝り固まった大人たちが、この出来事をきっかけに軽やかに変わっていく姿が私の目にはとても魅力的に映った。

推薦者(所属) 渡井悦子 氏  (足柄下教育事務所 社会教育主事)

光とともに、自閉症児を抱えて 『光とともに 〜自閉症児を抱えて〜 』1巻〜7巻
戸部けいこ 著  秋田書店


もともと、ミセス向けの月刊誌に連載されたコミックです。
テレビドラマ化されたので、ご覧になった方も多くいらっしゃると思います。
自閉症について最新の知見に基づいて、わかりやすく誠実に描かれているので、自閉症に対する前向きで正しい理解が得られることうけあいです。
親子でいっしょに主人公、光くんの成長を見守りませんか?

推薦者(所属)

鈴木義邦 氏 (県生涯学習文化財課)


山古志村のマリと三匹の子犬 『山古志村のマリと三匹の子犬』
桑原眞二・大野一興 著 / ikko 絵   文藝春秋


『世の中におきるいろいろなことはたった二種類しかないそうです。ひとつは「どうにもならないこと」もうひとつは「どうにかなること」マリは、その二つについてわたしたちに教えてくれました。』(本文より)
2004年10月23日。マリは三匹の子犬を出産します。しかし、その日の夕方、大きな地震が村をおそい、一瞬にしてたくさんの家がつぶれてしまいます。おじいさんに生きる勇気をあたえ、そして、救い出されるまでの16日間、マリはだれもいない荒れはてた土地で、生まれたばかりの子どもを守りぬきます。
命を大切にするという、あたりまえのことを忘れてしまっていませんか? そんなことをあらためて考えさせてくれる、感動の物語です。

推薦者(所属) 纐纈仁志 氏 (真鶴町教育委員会 生涯学習課)

13歳のハローワーク 『13歳のハローワーク』
村上 龍 著  /  はまの ゆか 絵    幻冬舎


子どもの頃、「将来の夢は」と聞かれ、たいへん困りました。運動が得意な子は、すんなりとスポーツの選手になる事をあげていましたが、私は運動が苦手だったので、何にするかずいぶんと悩んだことを覚えています。というのも、スポーツの選手以外の仕事についてはほとんどわからなかったからです。今考えると、将来の夢の具体的な姿がわかっていないのだから選べなかった事も無理はなかったのだと思います。
この「13歳のハローワーク」には、いろいろな「好き」を入り口に514種の職業が紹介されています。まず、紹介されている職業の多さに圧倒されました。そして、子どもの頃に戻った気分で、この本をながめてみると、なんだかわくわくしてきました。もしこの本が子どもの頃にあり出会っていたら、私の人生もきっと今と違ったものになっていたと思います。きっと、「将来の夢は」と聞かれた時に、胸を張って「○○になりたい。」と言っていたのではないでしょうか。今も、時々ぱらぱらとめくりわくわく感を楽しんでいます。

推薦者(所属)

飯塚亮人 氏 (相模原市教育委員会)


おれはティラノサウルスだ 『おれはティラノサウルスだ』
宮西達也 著     ポプラ社


弱肉強食の恐竜の世界。恐竜の王者といわれる肉食のティラノサウルスが翼竜プテラノドンの子どもをねらっている。が、火山の噴火がおきてティラノサウルスがけがをしてしまう。「困っている人がいたら助けてあげるのよ。」という母の言葉から、プテラノドンの子どもが健気にティラノサウルスの看病をすることで2頭の心の中に友情が芽生えていく。
傷が癒えて仲良く友だちになれるかなと思いきや、悲しいかなやはり恐竜の世界。心は通じているのに友だちになれない。そんな切ない気持ちで胸がいっぱいになってしまいました。ティラノサウルスの表情の移り変わりを見るともらい泣きしそうです。
私たちの世界にもこんな経験した人がいることでしょう。友だちになりたくてもうまくなれない。でも、心が通い合えばきっと友だちになれるはず。そんなことを考えさせてくれた絵本です。
ティラノサウルスよ、元気を出してがんばれよ!

推薦者(所属)

清水 良 氏  (愛甲教育事務所 社会教育主事)


赤毛のアン 『赤毛のアン』
ルーシー・モード・モンゴメリー 著 / 掛川 恭子 訳  講談社


"プリンスエドワード島"−この島へ行き、グリーンゲイブルスに住む素敵な少女アンと出会いたい。『赤毛のアン』を読んだ時、私はいつもそう思います。
孤児院で暮らしていたアンは、マシューとマリラに引き取られ、美しい自然にあふれるグリーンゲイブルスで成長していきます。アンのことをみっともないと言った年上の婦人に対して面と向かって非難したり、いちご水と間違えてワインを友達に3杯も飲ませて酔わせてしまったり、赤毛を染めようとして緑色の髪にしてしまったり…。アンは次から次へといろいろな事件を引き起こします。そういった事件を通して、アンは人々との心の交流を深め、成長していきます。
感性豊かで想像力に富むアン。チャーミングで愛らしいアン。赤毛でそばかすだらけのやせっぽちの少女アンのなんと魅力的なこと。そして、アンを優しく見守るマシューとマリラの兄妹もとても素敵です。『赤毛のアン』は、心が温かくなり、元気が出てくる物語で、私の大のお気に入りです。
皆さんもこの物語を読んだらきっとアンのファンになりますよ。

推薦者(所属)

橋久美子 氏 (高相津久井教育事務所 社会教育主事)


窓ぎわのトットちゃん 『窓ぎわのトットちゃん』   黒柳徹子 著    講談社


「おたくのお嬢さんがいると、クラス中の迷惑になります。よその学校にお連れください!」
小学校1年生にして学校を退学になったトットちゃん(黒柳徹子さん)が行くことになった新しい学校は・・・本当の電車が教室になっていて、座席が自由、授業の時間割はなく、好きな学科から自習形式で一人一人が取り組むという今までとはまるっきり違うタイプの学校・・・「トモエ学園」です。
第二次世界大戦が終わる少し前まで、実際に東京にあった小学校と、そこに本当に通っていた女の子(黒柳さん)のことを書いたこの本は、私が教育に携わるようになった今も時々読み返し、その度に新鮮な感動を与えてくれます。
好奇心に満ちあふれ、やりたいことがあるともうそれだけで頭がいっぱいで、とにかくやってみる、そんなトットちゃんとその仲間たち。そして、感性豊かな子どもたちをおおらかに見守り、遊びながら大切なことを学ばせてゆく大人たち。
子どもが読んでも大人が読んでも優しく元気になれるお薦めの一冊です。

推薦者(所属)

大谷京司 氏 (愛甲教育事務所社会教育主事)


スラムダンク勝利学 『スラムダンク勝利学』  辻 秀一 著   集英社インターナショナル


スポーツに熱くうちこんでいる君へ・・・必見の1冊!
指導者の教本として人気の著書ですが選手としても必見の価値があると思います。『ただ、がんばるだけでは意味がない! 超ヒットバスケ漫画"スラムダンク"のなかに必勝の秘密があった。スポーツで勝つ、自分の人生に勝つ。スポーツも、人生も、ただガンバルだけでは意味がない。スポーツ心理ドクターが、漫画「スラムダンク」をテキストに、「勝つための心理学」を説く』『スポーツドクターとして子供からプロに至るまで様々な選手と係わりを持つ著者の辻秀一さんが、スポーツ心理学とご自身の考えを交えながら、「勝利学」として理論化』と紹介されています。
著書には ◇目標達成への鍵は「理解と覚悟だ」 ◇感情のコントロール ◇"するべき事"をする  ◇"今"に生きる! ◇必ず自分に返ってくる ◇仲間の大切さ ◇心のつながり といった内容について説かれてあり、今まさに絶好調の君、壁にぶつかって悩んでいる君に元気、勇気、根気を与えてくれる1冊です!
なによりもスポーツだけでなく、今を生きる自分、これからの自分に生きる力を与えてくれる「心のミルク」のような気がします。

推薦者(所属)

日極 忠 氏 (県内在住 元中学校教師)


あなたの手のひら 『あなたの手のひら』  星野富弘 著  偕成社


この本の作者の星野富弘さんは、24歳の時に事故で首の骨を損傷して、手や足が動かなくなってしまいました。しかし、2年半後、わずかに動く口に筆をくわえて文字を書き始めました。また、病室に飾られた花を描き始めました。その後、詩画や自分の気持ちを書いたエッセーや手記などの数多くの作品を発表しています。
この本には、四季の花の詩画63点と16編のエッセーがあります。季節を感じながら本をゆっくりと読み進めてみてください。新しい発見があるはずです。あなたも詩に込められている作者の気持ちを感じてみてはいかがですか。私は、この本を読み終えた時、とても温かい気持ちになりました。

推薦者(所属)

塩川幸恵 氏 (中教育事務所 社会教育主事)


りんご 『りんご』
スーザン・バーレイ 著 / 三木 卓 訳   かまくら春秋社


登山者が野原にすてたりんごのしんから、りんごの木が生まれました。
野原にひとり生まれたりんごの木は、動物たち(リス・小熊・きつね・ミミズ・モグラ・ねずみ)と友だちになり、やさしいお月様に見守られながら、風や雨に耐えて成長していきます。
秋になり、りんごの木は、感謝の気持ちを動物たちに届けます。
赤いりんごは、風に飛ばされて野原の動物たちに届くのです。
一本のりんごの木を通して、友達の友情・生きることの素晴らしさを語りかけてくれます。
心温まるストーリーとかわいい挿絵が、私たちをやさしい心にしてくれます。

推薦者(所属)

三宅美子 氏 (足柄上教育事務所 社会教育主事)


あらしのよるに 『あらしのよるに』  木村裕一 著   講談社


ごうごうとたたきつけてきた。それは「あめ」というより、おそいかかるみずのつぶたちだ。この物語はこのような書き出しから始まる。あらしのよるにぐうぜんに、その二匹は出会ってしまった。ぜったいに出会ってはいけない二匹であった。
お互いの正体がばれそうでいてばれない展開は、読む者をハラハラドキドキさせる。ひとたびお互いの正体が明らかになれば、その次に何が起こるかはだれにでも想像がつく。しかし、この二匹、アイとカブには友情とも思える心がかよい合う。
この物語はどうなるのだろうかと、ぜったいにつづきが読みたくなる。
この物語のシリーズ最後では、「がんばれ メイ!」「がんばれ カブ!」とついついおうえんしたくなってしまう。ぜひシリーズで読んでほしい。

推薦者(所属)

下澤 豊 氏 (南足柄市立岡本小学校)


バッテリー 『バッテリー』  あさのあつこ 著  教育画劇(単行本) 角川文庫(文庫本)


「バッテリー」その題のとおりに、野球のピッチャーとキャッチャーのお話です。しかし、物語はこの二人の中学生のスポーツ根性ものではありませんでした。自分の好きな野球については、たとえ何があってもやり抜こうとするピッチャーと、そんなピッチャーを認め、自分もそれにふさわしくなろうとするキャッチャー。純粋に野球をやろうとする二人に、家族・勉強・友だち・先輩との関係、そして何より自分との葛藤が起こり、読む人の心を引きつけます。子ども向けの本ですが、実は大人も読め、私が中学生の時、こんな感情を持っていただろうかと入り込んでしまう本です。私が全6巻ある中でまだ、3巻までしか読んでいませんが、最後まで目が離せない「バッテリー」です。スポーツに興味のない人でも、十分あじわえる本です。

推薦者(所属)

山中敏代 氏 (平塚市立豊田小学校)

葉っぱのフレディ 『葉っぱのフレディ−いのちの旅−』  レオ・バスカーリア 著 / みらいなな 訳  童話社


一年を通して日曜日ごとに年老いた父と一緒に家の周りを散歩しています。変わりゆく季節の中で目に映る景色を見るたびに、この絵本のお話が思い出されます。 大きな木の太い枝に生まれた、葉っぱのフレディのお話です。 春に生まれたフレディが、親友で物知りのダニエルから、いろいろなことを教わります。木の葉っぱであること、めぐりめぐる季節のこと、・・・。楽しい夏があっという間 に過ぎて、秋が来て、緑色の葉っぱたちが一気に紅葉し、それぞれちがう色に色づいていきます。そして、冬。とうとう葉っぱが旅立つときがきます。 ダニエルは、フレディに「いつかは死ぬさ。でも、"いのち"は永遠に生きているのだよ。」と語りかけます。フレディは、自分が生きてきた意味について考えます。「ねえ、ぼくは、生まれてきてよかったのだろうか。」 この本を何度も読むたびに、本の言葉が心に響きます。「生きることはどういうことか」「死とは何か」を考えさせられます。小さい子どもから大人まですべての方にお薦めの一冊です。そのときどきに親子で読み直し、"いのち"や自分の人生について考えるきっかけとなる絵本です。

推薦者(所属)

倉澤良一 氏 (足柄下教育事務所 社会教育主事)

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